今やゲームやアニメで有名となった「真・女神転生」「ペルソナ」といったシリーズのルーツは、1986年に発売された小説「デジタル・デビル・ストーリー」(略称:DDS)シリーズに始まる。
その原作者である西谷史(にしたに あや)氏の、任天堂に対して何気なく話した事柄は、いつしか「女神転生」(「デジタル・デビル・ストーリー」シリーズの1作目)の小説を産み、メディアミックス展開に派生し、後の「メガテン」シリーズの礎となった。
本ページは、各種資料や原作者の西谷史氏への取材を元に、「デジタル・デビル・ストーリー」の沿革を綴ったものである。
西暦 | DDSの出来事 | 世界・日本での主な出来事 | |
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【伝聞】西谷氏が、日本的な要素のあるファンタジーのゲームを作ってはどうかと、当時交流のあった任天堂に話す。その意見に対し、任天堂側から「いっそ原作を書いてみたらどうか」という逆提案を貰い、デジタル・デビル・ストーリーの執筆に着手し始める(西谷氏談) |
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月刊パソコン情報誌「Oh!PC」内の1コーナー「ショートSF」にて、西谷史氏の連載が開始される。内容はPCをテーマにした近未来ショートSFで、公開された作品のいくつかに、デジタル・デビル・ストーリーにつながっていくアイデアがいくつかあった。 |
9/13 ファミリーコンピュータ用ソフト「スーパーマリオブラザーズ」発売
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10月 |
「暗殺獣」
恋人に振られた男が、家に届いた謎のプログラムを実行して暗殺獣を呼び出す話。 いつの間にかディスプレイ上に虎の絵が描かれていた。口が異様に大きく、耳の付け根から触覚が生えている虎が。 といったケルベロス召喚の原型ともいうべき描写が登場する。 |
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11月 |
「渋谷騒乱」
政府から支援を受けたテレビ局が、自動ニュース作成システムにより、日本中に映像を撮影するフライを放つ。結果、アイドル中森京子のプライバシーがなくなる話。 |
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12月 |
「魔術」
都立十聖高校に通う西沢豊が、不良グループにいじめられた復讐として、学校のCAIルームのホストコンピュータを使い、悪魔を使役する話。 |
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?月 |
TVアニメ「うる星やつら」のプロデューサー・井上堯男氏が、徳間書店の鈴木敏夫氏に西谷氏を紹介。「Oh!PC」のコラムが面白いため、
アニメージュでも何か書けないかと話が持ち込まれる。その際、鈴木氏が高橋望氏を担当として指名する。 |
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【伝聞】西谷氏、徳間書店に対して「デジタル」をキーワードにした物語の企画を提示する。その中には「Oh!PC」の連載中に考えたコンセプトも含まれていた。 その中でも、徳間書店側は「PCで悪魔を呼び出す」という発想を特に気に入り、この発想でオリジナル長編を書けないかと打診される。(西谷氏談) |
2/21 任天堂から「ファミリーコンピュータ ディスクシステム」が発売
2/21 ファミリーコンピュータ ディスクシステム用ソフト「ゼルダの伝説」発売
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2月10日 |
アニメージュ1986年3月号に、小説 | ||
3月31日 |
アニメージュ文庫より、小説 尚、アニメ化案はこの時点で出ていた(まだ未決)。(西谷氏談) | ||
4月7日 | 株式会社アトラス(旧社)が設立 |
4/26 チェルノブイリ原子力発電所事故発生
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?月?日 |
【伝聞】小説の売れ行きが好評だったことから、アニメ化が決定する。(西谷氏談) |
5/31 FIFAワールドカップ メキシコ大会が開幕
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?月?日 |
【伝聞】出来上がった原稿を任天堂に提示、検討してもらう。が、内容に教育上問題のある記述があるため、ゲーム化を断られる。(西谷氏談) 【伝聞】西谷氏を含むプロジェクトが、株式会社アトラスへゲーム化の打診し、アトラスが開発の元、株式会社ナムコ(現在の株式会社バンダイナムコエンターテインメント)からゲームの発売が決定する。(西谷氏談) 【伝聞】ほぼ同時期、西谷氏を含むプロジェクトが、株式会社日本テレネット(現在は事業停止)へ、PC向けのゲーム化案を打診、決定する。ゲームの方向性は西谷氏側が検討していた案を参考にしてもらう程度に留めて伝え、具体的にどういった内容にするかは日本テレネット側に委ねる。(西谷氏談) 尚、このPC向けゲームの開発には、株式会社アトラスも協力している。 |
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9月26日 |
アニメV 1986年11月号にて、発売が決まったOVAのラインナップに | ||
10月27日 |
アニメージュ文庫より、小説 また、巻末には「デジタル・デビル・ストーリー」のアニメ化決定告知が掲載される。 | ||
11月27日 |
アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」
服部康夫氏(ニュートピアプランニング社長)
※順不同、役職等は発表当時のもの
尾形英夫氏(徳間書店局長) 高橋豊氏(ムービック社長) 山下辰巳氏(徳間書店専務) 杉本誘里氏(ミュージシャン、主題歌担当) 西谷史氏(原作者) 北爪宏幸氏(キャラクターデザイン) 西久保瑞穂氏(監督) | ||
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2月8日 |
MSXマガジン3月号にて、日本テレネットから「ビッグ・プロジェクトが動き出した」との広告が出され、ゲーム開発が日本テレネット、開発協力がアトラスであることが発表された。 ただし、この時点ではゲームの具体的なプラットフォームの記載は無い。 | |
2月22日 |
東京・四谷の映広音響で、アニメのアフレコが行われる。 | ||
3月8日 |
月刊ログイン4月号にて、日本テレネットからPCゲーム発売の広告が出される。 プラットフォームがPC-8801mkⅡSR, FM77AV, X1, MSXと発表される。 | ||
3月21日 |
福岡県のテアトル西新にて、アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」の最初の劇場公開が行われる(~4月3日)。 |
3/2 アップルコンピュータからMacintoshⅡ、Macintosh SEが発売される
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3月25日 |
徳間書店より、小説「デジタル・デビル・ストーリー 女神転生」を丸々映像化したアニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」が、ビデオテープ媒体(VHS/β)で発売される。 この時、予約特典として先着10000名にプレゼントされた冊子「THE MAKING of DDS」内に、ファミコンソフトが株式会社ナムコから6月発売予定と一部の購入者にのみ発表される。 | ||
3月27日 |
新潟県長岡市の覚張書店にて、キャラクターデザイン担当・北爪宏幸氏のサイン会が行われる。 | ||
3月28日 |
東京都の大井ロマンにて、アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」の劇場公開が行われる(~4月5日)。 | ||
3月29日 |
千葉県柏市のアニメイト柏にて、北爪宏幸氏のサイン会が行われる。 | ||
4月4日 |
大阪府の花月シネマにて、アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」の劇場公開が行われる(~4月10日)。 |
4/1 国鉄が民営化し、JRが発足する
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4月5日 |
神奈川県横浜市のアニメイト横浜にて、北爪宏幸氏のサイン会が行われる。 | ||
4月8日 |
月刊ログイン5月号にて、株式会社日本テレネットからPC用ゲームのプラットフォームに PC-9801が追加された広告が出される(後にPC-9801版は発売中止) | ||
4月25日 |
徳間書店より、アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」が、ディスク媒体(LD/VHD)で発売される。 | ||
7月 |
株式会社日本テレネットから、PC8801-mkIISR、およびMSX向けPCソフト |
7/11 世界の人口が50億人を突破する
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7月14日 |
ファミリーコンピュータマガジン 1987年No.13 にて、ファミリーコンピュータ向けゲームの発売が、ナムコから8月~9月発売の告知がなされる | ||
8月 |
株式会社日本テレネットから、X-1向けPCソフト | ||
8月8日 |
月刊ログイン9月号の広告にて、日本テレネットからPC-9801向けのゲームが「諸々の事情で発売できなくなりました」との正式な発売中止の告知が出される | ||
9月 |
株式会社日本テレネットから、FM77AV向けPCソフト | ||
9月11日 |
株式会社ナムコから、ファミリーコンピュータソフト 原作のゲーム化としては、日本テレネット版よりも後に発表された作品ではあるが、本作がゲームとしての「メガテンシリーズ」の原点となる。 内容は、当時での最新刊「魔都の戦士」終了時点から派生したパラレルワールドである。 | ||
10/19 ニューヨーク株式市場が大暴落(ブラックマンデー)
12/18 ファミリーコンピュータ用ソフト「ファイナルファンタジー」発売
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2月29日 |
アニメージュ文庫より、小説 |
2/10 ファミリーコンピュータ用ソフト「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」が発売
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3月31日 |
関西のローカル番組「アニメだいすき!」シーズン4にて、OVA |
3/18 東京ドーム開場
9/17 ソウルオリンピック開幕
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1/7 昭和天皇崩御
1/8 元号「平成」が始まる
4/21 任天堂から「ゲームボーイ」が発売される
11/10 ベルリンの壁崩壊
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1/7 アニメ「ちびまる子ちゃん」放送開始
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4月6日 |
株式会社ナムコから、ファミリーコンピュータソフト 以降リメイクを除き、小説「デジタル・デビル・ストーリー」の原作設定を扱ったゲームとしては最後の作品となる。 ファミリーコンピュータ版で培われたゲームシステムは、1作目から開発を行っていた株式会社アトラスが販売も引継ぎ、「真・女神転生シリーズ」として発展していく。 | ||
5月31日 |
アニメージュ文庫より、小説 |
6/8 FIFAワールドカップ イタリア大会開幕
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8/2 イラクがクウェート侵攻
11/21 任天堂から「スーパーファミコン」が発売される
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2月28日 |
アニメージュ文庫より、小説 |
バブル経済が崩壊し、「失われた20年」が始まる
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8月31日 |
アニメージュ文庫より、小説 | ||
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4月30日 |
アニメージュ文庫より、小説 | |
7/25 バルセロナオリンピック開幕
9/12 アニメ「クレヨンしんちゃん」放送開始
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12月31日 |
アニメージュ文庫より、小説 | ||
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12月31日 |
アニメージュ文庫より、小説 | |
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5/1 アイルトン・セナ事故死
11/22 セガ・エンタープライゼスから「SEGA SATURN」が発売
12/3 ソニーから「PlayStation」が発売
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1/17 阪神・淡路大震災
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3月31日 |
株式会社アトラスから、ファミリーコンピュータ版ゲーム |
3/20 地下鉄サリン事件発生
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8/25 マイクロソフトがWindows95(英語版)を発売
10/4 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が放送される
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11/1 東芝から、世界発となるDVDビデオプレイヤー「SD-3000」が発売される
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8/31 ダイアナ皇太子妃、交通事故死
9/26 アップルコンピュータがMac OS 8を発売
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2/27 長野オリンピック開幕
6/25 マイクロソフトがWindows98(英語版)を発売
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3/4 ソニーから「PlayStation2」が発売される
9/15 シドニーオリンピック開幕
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3/31 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン開園
9/11 アメリカ同時多発テロ事件発生
10/25 マイクロソフトがWindowsXP(英語版)を発売
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1月25日 |
パイオニアLDCより、アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」が、DVDで発売される。 | |
5月11日 |
絶版・品切れ本を、ユーザーからの投票を募って復刊を「復刊ドットコム」にて、「デジタル・デビル・ストーリー女神転生」他 全3巻の復刊活動が始まる。 |
5/31 2002 FIFAワールドカップ開幕
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3月15日 |
「復刊ドットコム」にて、 |
3/19 イラク戦争開戦
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2月?日 |
アトラスのモバイルコンテンツ「メガテンα」内にて、ファミリーコンピュータ版「デジタル・デビル物語 女神転生」のリメイクゲームがリリースされる。
また、同コンテンツ内の「デジタルノベル」にて、「デジタル・デビル・ストーリー」シリーズ、及び「新デジタル・デビル・ストーリー」シリーズの全9作品が、携帯用ディスプレイの端末で閲覧することを前提に、西谷氏自身が加筆修正したうえで発表される。
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8/13 アテネオリンピック開幕
11/21 任天堂が「ニンテンドーDS」を北米で発売
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3月1日 |
「復刊ドットコム」にて、 | |
8月8日 |
ブッキングより、過去の小説「女神転生」「魔都の戦士」「転生の終焉」を1冊にまとめた小説 |
8/8 郵政解散
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6/9 FIFAワールドカップドイツ大会開幕
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7月10日 |
ブッキングより、過去の小説「捕われの女神」「氷界の女王」「神魔の惑星」を1冊にまとめた小説 | ||
ブッキングより、過去の小説「怒りの妖帝」「女神よ永遠に」「転生の絆」を1冊にまとめた小説 | |||
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1月26日 |
徳間書店より、アニメ「デジタル・デビル物語 女神転生」が、DVDで発売される。 |
1/9 初代iPhoneが発表される
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6月18日 |
Nintendo Switch向けソフト「ナムコット コレクション」のダウンロード・コンテンツ(以下DLC)・ソフト第3弾として、「デジタル・デビル物語 女神転生」が、2020年10月に株式会社バンダイナムコエンターテインメントから配信されることが発表される。 |
1/30 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言する
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8月6日 |
「デジタル・デビル物語 女神転生」を含む、「ナムコット コレクション」DLCソフト第3弾の配信が、当初の10月予定から前倒しになり、8月20日に変更される。 | ||
8月20日 |
「デジタル・デビル物語 女神転生」を含む、「ナムコット コレクション」DLCソフト第3弾が、ニンテンドーeショップにて10:00から発売される。 |
「デジタル・デビル・ストーリー 女神転生」が産声を上げてから、この文を書いている時点で30年あまりの月日が経っています。インターネットが発達し、情報共有が容易くなった今となっては、 もはやゲーム「女神転生」のルーツが失われることはないと一ファンとして安心しきっていました。ですが、その肝心の成り立ちについて、一部インターネット上にて事実でない内容が流布されつつあると聞き、その危機意識から本ページの作成に至った次第です。
歴史の編纂にあたっては手持ちの資料では限界があったため、「デジタル・デビル・ストーリー」シリーズの著者である西谷史先生にご協力頂きました。 幾度とメールでのやり取りを行い、誤解を招く箇所を校正していただき、細かい調整を数カ月にわたって行いました。 こちらの不躾で要領を得ない数々の質問にも、匙を投げることなく丁寧に対応してくださった西谷史先生に、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。